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2008/12/24

[実験屋日記] I must be strong, and carry on...

つかの間のドイツ、終了。明日には日本に移動である。

まあ今回は、実に休暇にふさわしいような、ゆっくりとした実験生活であった。でも、こっちでやっているプロジェクトも、3つともそれなりには進展があったし、去年の今頃に取りまとめたプロジェクトも、やっと紙になった。何人もの査読を経た今、ゆっくり読み返すと、実に得体の知れない流れの悪い文章にはなっているが、それはまあそれで、よしとしよう。地味だが、とても重要な研究ではあるので。

まあ、共同研究者の院生がとても優秀なので、次は夏のHumboldt財団による招聘まで、暫くは彼が筆頭のプロジェクトのまとめの手伝いと、長期的なプロジェクトの事務的な手はず、そして、神経内科といっしょにはじめる予定のdeep brain stimulationのプロジェクトの計画など、遠くからできることをやることになる。病院の実習のほうも、適当にこなさないといけないし。



Tears in Heaven 天国の涙
Eric Clapton and Will Jennings
(これは子供を不慮の事故で亡くした父、Claptonの心情を歌っているらしいのだけれども、実験は実に、僕の、ベイビーなのである。)

Would you know my name if I saw you in heaven?
Would it be the same if I saw you in heaven?
I must be strong and carry on
'cause I know I don't belong here in heaven
もし、天国で会ったら、僕の名前、覚えていてくれるかい?
もし、天国で会ったら、昔のまんまかな?
 でも、僕は先に進むよ、意を決して、
 だって、天国にはいられないものさ。

Would you hold my hand if I saw you in heaven?
Would you help me stand if I saw you in heaven?
I'll find my way through night and day
'cause I know I just can't stay here in heaven
もし、天国で会ったら、手を握ってくれるかい?
もし、天国で会ったら、立てるように支えてくれるかい?
 でも、僕は別に道を見つけるよ、夜を越えて昼を越えて、
 だって、天国にはいられないものさ。

Time can bring ya down
Time can bend your knees
Time can break your heart
Have ya beggin' please beggin' please
 時の流れには志をくじかれるし
 時の流れには屈服させられる
 時の流れには失望させられるし
 時の流れには懇願させられる、お願いだから、と

Beyond the door there's peace, I'm sure
And I know there'll be no more tears in heaven
 扉の向こうには安らぎがあるさ、きっと
 そして天国には涙はいらないんだよ

Would you know my name if I saw you in heaven?
Would it be the same if I saw you in heaven?
I must be strong and carry on
'cause I know I don't belong here in heaven
もし、天国で会ったら、僕の名前、覚えていてくれるかい?
もし、天国で会ったら、昔のまんまかな?
 でも、僕は先に進むよ、意を決して、
 だって、天国にはいられないものさ。

2008/12/19

[実験屋日記] ストレス

実験がどれも、いいところまできている。これは、かっさらわれなければ、3年後のHumboldt財団研究員終了の頃までに、十分、自分の研究室がもてるだけの業績になりそう。でも、ストレスが。

来週半ばに日本に戻ってから、次実験できるのは、早くて6月末、悪くしたら、8月になってしまうかもしれない。これは、たまらない。

2008/12/18

[実験屋日記] Guniea Fowl

今日は研究所のクリスマスパーティー。技術や事務の人を含め、100-200人くらいであろうか、集まって、歌を歌ったり伝統のドイツクリスマス料理を食べたり。でまた、例によって、所長先生がよってきて長話になった。

所長先生は若いときにはいろいろな実験系で成功を収めているが、その一つであるGuniea Fowl。家禽類だが、非常にcommunicationのレパートリーが幅広いのだという。で、実験が終わると、ブランデーで環流できるそうだ。僕も、農学部らしく、豚に転向しようか知らん。豚だったらやっぱり、環流液の量も必要だし、味も強いから、焼酎あたりでも大丈夫であろう。

[実験屋日記] 研究室

やっぱり、研究室は、楽しい。試験勉強で夜更かしするのはあんなにしんどいのに、研究室だったら別に徹夜も苦ではない。後、先日、久しぶりに見た夢が、楽しい日々を送ったアメリカの小学校がやたらと明るい感じの精神病院に変わっていて、そこで研修をする夢。去年の実習の中では、精神科が一番ローストレスだったのだろう。その夢には意外な旧友がたくさん登場した。

本当だったらメディカルスクールはドロップアウトして、このままドイツに居残りたい。でも昨日の研究室のクリスマスパーティー(ドイツ式、9ピン・ボーリング大会)で、研究所長でもある部長先生とまた例によって長話をしたのだが、「苦しいときほど大きなチャンスが回ってくるものだよ」と。その部長先生も医学部を卒業して、何年か、同じような苦境におかれていたという。

2008/10/25

[実験屋日記] 噂は本当だった...

Two Strikes and You're Out, Grant Applicants Learn
Jocelyn Kaiser
(Science Magazine, 17 October 2008)

科学研究費の再提出、一回まで。

いよいよアメリカン・サイエンスの没落が始まる...

2008/10/12

[実験屋日記] アメリカン・サイエンスの行方

株は毎週のように暴落を繰り返しているが、このただならぬ事態がただで収まるわけがない。

アメリカの生物学系科学研究の多くは、NIHの科学研究費によってまかなわれているのだが、この科学研究費の平均採択率はすでに10%を下回っているというし、採択されなかった申請書の再提出も、2回上限だったものを1回に引き下げる動きすらあるらしい。この科学研究費は、人件費と大学のピンハネ分を含めて、アメリカの生物学インフラストラクチャーを根幹から支えているお金である。

まだ年度は初まったばかり。しかも、正式予算がまだ議会を通過していないため、去年レベルでの暫定予算期間にある。議会が銀行危機に本気で動き出したら、NIH予算なんて吹き飛んでしまいそうである。また年度末でいろいろ厳しくなってきたときにどうなるか、わかったものじゃない。

まあ、生物学系研究だって、銀行と同様バブルであったのはあきらか。急に拡張しすぎて、人が増えたら出費も増える。で予算縮小になったときに首が飛び出すわけだ。銀行危機と同様、アメリカ科学凋落の行方は、未だ不透明である。

2008/10/09

[新聞] ドイツは手堅い

A Sound Banking System Amid European Turmoil
by Tom Gjelten
(NPR All Things Considered, October 9, 2008)

ドイツのSparkasseとは、各州の信用組合。各州のSparkasseが全国ネットワークをなしているので、ドイツ中どこでも、引き出し可能である。生活感覚でいうと、郵便貯金のような感じかもしれない(Postbankというのはまた別にあるのだが)。

この各州のSparkasseは、今回の金融危機にもちっとも動じていないという。というのも地元の企業や家主など、手堅いローンしか行わず、New Yorkの変な紙には全く手を出さなかったらしい。もちろん利率はそこそこだが、こんなご時世でもきちんと利息が付く。

こういう手堅さから、今世紀初頭ののアメリカ凋落後は、ドイツあたりが意外と生き残れるかもしれない、という気がする。アメリカの若い実験屋も、Max Planckをはじめとする欧州の研究所に移る人が後を絶たないのも、無理もない。そういえばヨーロッパ人でアメリカ留学後にアメリカ滞留する若手も、減っているような気がする。

DAX, Dow Jones, Nikkei Average 225の比較
Chart for DAX (^GDAXI)

2008/09/28

[実験屋日記] クリエーターとマネージャー

ロビイストの知人に鴨をご馳走になる。

学生のころは活発にいろいろなイベントなどを企画していたものが、卒業して広告会社に勤めて、そこでは、才能のあるfreelancerを採用・管理して帳簿などをマネージするのが仕事で、本人自身はクリエイティブな仕事はしなかったそうだ。でも、学生のころから自分でいろいろな企画を立ててきたので、自分がクリエートする側にまた立ちたくなって、転職したそうだ。

でこれ、実験屋とまさにいっしょ。特に医者で臨床をやりながら研究室を持っている人は極端にそうだが、いったん偉くなって研究室が大きくなってくると、医者でない実験屋でも、マネージャに近いような仕事をする人も少なくない。自分はそのつもりでなくても、腕がなまったり、会議や研究費申請などの雑用が増えたりして、どうしても研究の息遣いから離れやすい。

だからぼくは、もし研究室がもてたなら、ポスドク・学生2,3人とテクニシャン1人程度にとどめたいものだ。あとドイツのMax Plankなどといった研究所や日本のRIKEN、あるいはアメリカで言えばHoward Hughesの研究室を持って、研究費申請に終われない立場が夢だ。

2008/08/12

[実験屋日記] 3カ年計画

皆さん、大変ご無沙汰いたしております。無事ワシントンに帰国して、メディカルスクールの病院実習を再開いたしました。ついては、こちらのブログは当面、書き残しのドイツ記事などをぼちぼち上げていく程度にとどめるつもりです。

転機なので、情勢分析と3ヵ年計画の概要をメモしておきます。

もしも、Humboldt研究員が当たっていなかったら、2年間はひたすら病院実習になっていただろう。Humboldt研究員に任命されたことにより、残りの医学実習と研究を織り交ぜることが履歴上可能になった、という意味でも、本当にありがたい話だ。



   <2008年>
● 2008年8月~12月... 病院実習
▲ 冬休み、2週間... ドイツにて実験
○ 冬休み、残り1週間足らず... ドイツより訪日

   <2009年>
● 2009年1月~6月... 病院実習
▲ 2009年7月~10月... Humboldt財団研究員 (ドイツビールを堪能)
● 2009年11月~2009年12月... 病院実習

   <2010年>
● 2010年1月~2010年5月... 病院実習
▲ 2010年6月~2010年7月... ドイツにて実験
(この時点で、論文の当たり外れと小ボス腐乱苦の盛衰に応じて、2011年夏以降の進退を検討)
(研修医になるか、それとも基礎研究に残るか。研修医になる場合は、マッチ出願をぼちぼち開始しなければならない)
(プロジェクトX、プロジェクトQ、プロジェクトH にどれもあたりがなければ、基礎研究で生き残ることは厳しいと考えられる)
● 2010年8月~2010年11月... 病院実習の残り。卒業。Herr Doktor Doktor Gawky。
▲ 2010年12月~... Humboldt財団研究員

   <2011年>
→2001年6月より、A.研修医、または、B.Humboldt財団研究員任期更新
A. 研修医に進んだ場合は、MD/PhD入学から研修医までに9年を要したことになる。通常7~9年程度要するMD/PhD課程としては遅いほうにはなるが、その間の論文履歴とHumboldt財団研究員を加味すると、致命的ではないと考えたい。その場合は研究分野を変更して、病理または放射線科などに進む可能性が高い。もちろん順当に神経内科、という可能性もないわけではない。あと、2015年(35歳)で専門医として研修を修了したら、たとえ研究履歴の伸び悩みがあっても、その後の研究室旗揚げは比較的容易なはずである。
B. 研修医をしない場合は、ドイツに残って、少なくとも3年程度は腐乱苦の番頭。論文がある程度あたっていれば、その時点で半独立の小さな研究グループを持たせてもらえる可能性は高い。もっとあたっていれば、日本やアメリカで独立開業を考えてもよいかもしれない。

2008/07/07

[実験屋日記] 嬉しい話

来月にはアメリカに戻って臨床実習を再開しなければならないのですが、ちょうどその折、Humboldt財団の研究員に内定しました。Humboldt財団は外人招聘のためのドイツの半官財団で、現在の研究所にいながらにして(政府)から給料と少しばかりの経費が出るというものです。メディカルスクールは適当に、うまく研究員の規定を満たしながらやっていけないか、画策を始めました。

やっぱり人生一度しかないので、MDの学位は取るにせよ医者の方は適当にして、当面は研究に掛けることを心に決めた矢先だったので、特にうれしい話です。つまり、大学医学部の事務方(教授会 1)に対しても、カリキュラムの融通を利かせてもらう言い訳ができました。



1. そんなものはアメリカにはないのだが

2008/06/26

[ドイツより] Deutschland, meine dritter Heimat

ドイツがユーロ杯決勝進出。この試合もまた、例によって街中で観戦。町中で買ったドイツチームのTシャツと、学食で配っていたドイツの小旗とで、装備は完璧。



今週は、うちの研究室に二台ある脳細胞記録システム(1台1000万円くらい)の出張修理兼販促で、テキサスからうちの研究室に、カナダ人の会社技術者兼マーケティング部長が来ている。そのうち一台が新しく買ったもので、どうもうまく記録がとれずに、半年以上ほこりをかぶっていた。

でシステムの不調は、電源からのスパイクの漏入よって、DAQがクロックを読み間違えてしまうことによるものだったらしい。 僕の担当の機械(博士の師匠の会社で作っている光学機器)には、最初にちゃんと、電源のところに電源フィルターを入れておいたから、そんなのばっちり。だって、オシロスコープを一目見たら、どっかから変なのが入ってきているなんて、一目瞭然だもの。

東ドイツ時代の配電がよくないのか、それとも古い冷蔵庫(?)かなんかが同じ配電盤につながっているのか。 いずれにしても、小ボスの腐乱苦(仮)に対してはまた一段、株を上げたみたい。だって、ほかのポスドク・院生たち、こぞってその新システムの駄目だしをしようと、半年近く苦心していた。僕の買ってもらった新しい機械は、渡独2週間目にはちゃんと、実験結果を出していたもんネ。アッカンベー。僕の電気は「最低限なんとか」レベルだと思うんだけれども、だからなおさらほかの人たちには、ちょっと失望。



で、その技術者券会社重役をちょっと街中に案内して、その後院生の恥無(仮)夫婦と合流して一緒に観戦した。こういう業者の人というのは、独特の視点を持っていて、とても学問の全体的な推移に敏感だったりする。変な学問的意地とかがないから、総じて見通しがよい。どこら辺がこれから↑か、どこら辺が↓か。いろいろ興味深い話を聞くことができた。

ひとつには、世界情勢。現在日本は年5台程度、中国は数台納入しているそうだ(アメリカは60台とかいっていた)。でも5年以内には中国と日本は、逆転するだろうとのこと。でも中国は、研究費の当たっている研究室はどれもアメリカ帰りの中国人で、よそから外人が入り込む余地はなかろう、と。アメリカの科研費危機については今年に入って小康状態、少し販売も回復の兆しを見せているそうだ。

あと、業種内での事情。これからの脳細胞の電気的記録機器は、現在5社ほどある小規模な会社同士で、統合・整理が起きるだろう、と。光学的な記録・刺激とか、ちょっと流行りだしているような実験までもを取り込んで、分野内でもさまざまに専門分化している細胞外電位記録の会社同士が合併し、どんどん多種の測定を、簡単に同時にできるようになっていくだろう、と。

生化学・分子生物学の試薬会社では、少し前に同様の合併の嵐が起きたばかりなのだが、はたして複雑な記録機器、しかも一台が1000万円を超えるような機械について、そんなに簡単に合併がなるのかどうかは、不明ではある。まあでも、細胞内電位の記録装置(100万円単位?)としては、悪損機器(仮)が合併などを経て独占首位に立ったわけで、同様のことが細胞外記録装置でもおきる可能性は、確かにありそうだ。

ドイツの決勝進出に踊り喜ぶ、Magdeburg市民たち

2008/03/13

[実験屋日記] うれしい悲鳴 (2)

ちょっとした思いつきからやってみた実験が、これも大成功。どうも運が良すぎるのでは?、&、新しいことばっかりやり過ぎ。すでにやっていることも、しっかり、最後までフォローしなくては。やれやれ、これは院生の恥夢(仮)と、本気になって作戦を練らなくてはならない、僕だけが徹夜をすればすむ問題ではなくなってきた。彼は家庭も大切にしているから、あまり無理をいいたくはないけれど、ダブルチームでやれば、二人ともすぐ独立できるだけの業績になる可能性もあるしね(こういう論法はずるいよね)。ちょっと技官事情にも変化があったので、それも含めてフランクと早急に話し合わねば。

2008/03/12

[実験屋日記] 医者に診てもらったら?

秘書さんの美嗚呼手(仮)「風邪でも引いたの?疲れた顔して」

僕「いや、ちょっと朝の5時まで働いていたんです。」

美嗚呼手「医者にでも診てもらったら。You are obviously mad。あら、あなた医学生だっけ?」

僕「今年だけですよ。今年終わったら、発狂状態は自然治癒するから」

でも、疲れた顔しているということは、実験にも悪く響くと考えられる。もう少し寝る時間もとった方がよいのだろう。

2008/02/08

[実験屋日記] 禁句

とても熱心な技官の香取~ぬG。実験をお願いする時に、優先順位を示すつもりでついうっかり、「こっちの実験は重要じゃないので」といってしまった。すると悲しい目をして、「それは残念だわ~。」

やばっ。「Nein, nein, nein。そうじゃなくてね、危急じゃないという意味。こっちのほうが、次の実験を計画する上ですぐに重要、こっちはすぐには重要ではない、という意味。」言語野を総動員してなんとか取り繕う。

熱心な技官に対しては、絶対に使ってはいけない言葉であった。疲れていると、なかなかそこまで気が回らない。もちろん、どうでもいい実験なんてお願いしませんよ。信じてくださいね。

2008/02/06

[実験屋日記] 実験屋天国

まずいくらい、研究環境が整ってきた。



部門1,2の丁寧な仕事をする技官の香取~ぬG.(仮)ともう一人の蚊取り~ぬO.(仮)。蚊取り~ぬO.は、小ボスの腐乱苦O.(仮)の奥さんでもある。

で、先日実験をお願いしたときは「明日はちょっと忙しいから無理かも~」とか言っていた蚊取り~ぬO.が、今日、香取~ぬG.と一緒に僕の実験をやってくれている。どう考えても腐乱苦あたりから、一言はいったのだろう。引く手あまたの部門最優秀技官の二人が、二人して、下っ端ポスドクの実験をやっているなんて、どう考えたってオカシイ。

忙しい技官達に悪いから、と腐乱苦に「HiWi 1 を2人雇用したい」と交渉して、それも許可が下りたのだが、それをどこからか聞きつけた香取~ぬG.は、「この実験、HiWiなんかじゃなくて、私やりたいです」と言ってくれた。香取~ぬG.は修士もとっていて知識豊富・頭脳明晰、しかも残業も苦としない、仕事も丁寧、お願いしておいたことは絶対忘れない、もう、技官の鏡というか、あり得ないような天使である。先日実験をお願いしたときに、きちんと実験の目的と目標を説明したのだが、そうすると彼女は必ず、それに沿って適切な判断で仕事をこなしてくれるのだ。その彼女が、僕の実験に興味を持ってくれている...。

こんな研究環境は、一生で二度とないかもしれない。これでものにできないようだったら、断髪して、きっぱり足を洗って、医者にでもなった方が世のためというもの。



腐乱苦にしてもそうだ。何が買いたいと言っても、腐乱苦は決まって「うん、じゃあ、お金あるか美嗚呼手(仮、秘書さん)に訊いてね」としかいわない。そして当然、お金はある。

大ボスの舎医費(仮)だって、廊下で会うといつもにこにこしている。

腐乱苦といい、舎医費といい、二人の香取~ぬといい、みんな期待のGPSプロジェクト。にこれでしくじったら、やっぱり、ハラキリものだらう。腐乱苦の研究費にとって重要な「甘い内角球プロジェクト」も同時に頓挫した日には、後ろ指ではなく、ほかのもので刺されかねない(冗談だが)。



それだけじゃない。

面倒を見ている院生の恥夢(仮)。もう、面倒を見ていると言うよりは、2人で相談して計画を立てたら、あとは勝手にやっていて、時々聞きに来るくらいの感じだ。教えてもいないディテールまで、いつの間に技を盗んでそつなくこなしている。はじめ面倒を見ていた勉蔵は、人は良かったが、そこらへん鈍くさかった。で、これほど飲み込みがいいと、教えていて実に気分がよい。

恥夢は修士を、同じフロアで解剖の研究をしてとったばかりだったが、ちょうど僕の用いている生理学的な手法とその解剖の新手法の相性がいいというので、共同研究を始めた。そのときは後釜探しも兼ねて共同研究相手を探していたのだが、いろいろな院生の実験をのぞくに、彼の実験が断トツで良くできていたというのもある。僕がアメリカに帰った後は、彼が跡を継いで機械の面倒を見ることになっている。

で、彼の解剖学的なスキルも、件のGPSプロジェクトには大いに役立っているし、僕自身、門外漢だが、解剖には前から興味津々である。もうちょっと余裕があったら、彼が本業でやっている先進的な解剖の実験を教えてもらうところなのだが。

いつも軽躁状態の僕と対照的に、彼はひどく落ち着いていてできた人なのだが、その彼に言わせると、「確かにpromisingなプロジェクトだから、別にこれで失敗しても、だれも責めたりはしないでしょう」だって。いやね、りくつはそのとおりなのだが、こんなに法螺貝を吹いておいてじゃあね。「アメリカ人のbullshitter」ということで許してもらえるかなあ...

まあそのときはそのとき。考えても仕方ないものは考えない。あとは、15万ほどの小道具の到着を待って、勝負分かれ目の決戦となる...





1. HiWi... 正確な略は分からないが、ヘルプする科学者、ということ。修士学生のバイト。でもうまくいった場合はそのまま居残って、修士・博士研究を行う場合もある。

2008/02/02

[実験屋日記] うれしい悲鳴

昨日データを解析していて、甘い内角ボールが飛んできているのに気づいたばかりだというのに、今日はまったく別の実験で、技官にお願いしてあった結果が仕上がってみると、恐ろしいことに、こちらも大当たりの予感をさせる結果となった。こちらはホームランというよりは、みんなが青木ヶ原の樹海をオリエンテーリングをしているところに、突然一人だけ、GPSが天から降っててきたようなもの。

で、その結果をまず小ボスの腐乱苦(仮)に見せたら、大ボスのドクトル舎医費(仮)所長(兼うちの研究部門長)を呼ぼう、ということになった。腐乱苦と舎医費は、オフィスも隣同士で師弟関係なので、いつもそんな感じだ。そして暗い部屋で3人、顕微鏡を囲んで、しばらく「これはひょっとしてすごいことになるかもしれない」などと、分かりきったこと変奏曲を合唱しました。



ところで、甘い内角ボールは、そもそも腐乱苦とのディスカッションで出てきたもので、GPSは最近帰国した際、以前居候していた日本の研究室の若い先生と雑談しているときにその先生(というか、失礼だけれども先輩という感覚か?)がいい出したものだ。やっぱり、脂の乗り切った若い研究者と、あることないこといろいろ話すのは、楽しいだけではないかもしれない。



友人の皆様、しばらく音信が絶えても、ご心配なく。
体力よ、しばらく持ち堪えてくれ給え。
舎医費にお願いして、技官を一人専属にしてもらえるよう、交渉しようかなぁ~。
それにしても、興奮して、眠れない。

2008/01/31

[実験屋日記] ホームラン狙い

内角の甘い球が飛んできました。きちんと振りぬくまで、1~2ヶ月、定期更新はお休みをいただきます。ただ、2月は旅の予定が2件あるので、2,3回は投稿することになるでしょう。

2008/01/14

[実験屋日記] Please get out of the new road if you can't lend your hand...

半年ほど糞詰まりになっていた論文が、やっと公になった。

この論文はいろいろな事情があって... 博士の指導教官と大喧嘩をしてその論文の関連の実験をとめられてから、無理やりそこまでのデータでまとめたもので、それでも中の上の雑誌を狙うも結局けられてしまい、short formatの雑誌になんとかおさまった次第。

博士の指導教官は「俺知らん」といってから、しかもその実験をとめてからでも、きちんと紙になってしまったことが判明して、それからからというもの、だいぶ僕への対応が変わった。しかも今の研究室ではボスの120%の後押しで、その先の仕事をしているので、まあ、僕の粘り勝ちということ。

実を言うと深い部分のある論文で、もっと実験を進めれば中の上の雑誌もいけたかもしれない。しかも、決してストーリーを作るために、超えたくない一線を越えるようなこともしていないから、嬉しい。結局論文のメインの趣旨にはできなかったが、僕の思う、これからの脳科学の行くべき方向の要点を織り込むこともできたし(まあ、センセはそれが理解できなくて、気に入らなかったのです)。この方向性が的外れでないことを、祈りつつ。

... For the times, they are a changing

2008/01/03

[実験屋日記] 今年のストラテジィー

今年は、去年のように大上段に振りかぶって長大な展望を繰り広げるようなことはしない。そこら辺については、去年書いたことを読み返しても、そう大きな変更はない。去年の目標を引用しておく:

【長期目標】 思った通りに実験をできる環境にありたい。脳についての物質科学的な世界観を変えうるような研究をしたい。
【中期目標】 独立して自分の研究室を旗揚げすること。
【短期目標】 学位を取得することすること。Impact factorを上げること。

【短期目標】に関して、学位はとりあえず取った。IFも躍進ではなかったが、着実にあげることができた。今年の【短期目標】としては、IFに加え、メディカルスクールにもどること、そして全てが軌道に乗ってきたドイツの研究からいかに多くのもの(経験・知見というよりは、論文数)を引き出すか、ということが中心となる。



【総論:情勢分析】
医師ではなく、研究の道に生きる決心はとりあえずついた。あと5年程度は少なくとも、がんばってみよう。(それでものにならなかったら、そのときになって から研修をし、医師として禄を食めばよろしい。あるいは製薬に就職、という手もある。翻訳だって、不安定ではあるが、フリーでも結構いい暮らしはでき る。)よって、メディカルスクール卒業後は臨床研修をすっ飛ばして、またポスドクにつくことを前提として行動する。

ドイツではとても恵まれた立場におかれている。メディカルスクール卒業後、これを引き延ばすことを目標とするか、それとも思い切って断ち切りもっと大胆な賭に出るか、1年後あたりには決断して、賭に出る場合は下準備を始めねばならない。

以下のスキルを研究にいかに活かしてゆくか。いろいろ少しずつ、器用にできてしまうような性格が災いしないように、戦略を練らねばならない。
  • 言語力... まあ、アメリカ人としては当たり前だが、ドイツにいたって、たいていの人よりはよっぽど英語ができることが判明した
  • 医学知識... メディカルスクールに戻ったら、特に以下の疾患に触れることをめざし、また、研究のネタを探すことを主眼とする
    • てんかん
    • 自閉症
    • 過敏性腸疾患
    • 運動障害(小脳)
    • 麻酔
  • 実験手技... これにあまり引きずられると、高等テクニシャンになってしまう
  • プログラミング... これ、趣味をあまり引きずりすぎて、時間ばかり無駄になっているのでは? でも、メディカルスクールに在籍しながら、暇なローテーション中はこれを用いて論文を作ることも考えなくもない。難しいところだ。

【総論:学問的進路(備忘?)】
  • やっぱり、末梢への逃げ道は残しておくべきだろう。大脳は難しすぎるかもしれない。てんかん研究からはいって迷走神経刺激の研究を行い、そこから腸管の方に入っていくという筋書きも、面白いかもしれない。てんかんは重要疾患で、脳研究ではもっとも法螺を吹かずに金が取れる分野だとおもう。そこを軸足に、腸管の方に戻れると、仮に日本に帰ることができた場合に若干都合がよいかもしれない。
  • あるいは、睡眠・麻酔などをやっていれば、呼吸器・循環器関連の脳幹への活路を確保できる可能性もある。
  • 植物電気生理学に転向、という夢想もあって、事実本も2冊読んだが、あまりにもぶっ飛びすぎ。医者が植物? Sabaticalをとれるくらいの立場になったら、趣味実験として行うもよし。



【各論:メディカルスクール】
  • 絶対に戻る。今年戻りどきを逸したら、一生、MDは獲得せずに終わるだろう。
  • で、研究の道で生きるためには、残るメディカルスクールの2年の間も、ドイツでの研究を(細々とでも)続けられるよう、可能性を探る必要がある。定職にありつくまでは、論文獲得競争に勝たねばならない。履歴の上で、ブランクはあまりよろしくない。2月あたりにはワシントンにかえって、学長などとあって、カリキュラムをちょっと柔軟にしてもらうよう、直談判をしよう。
  • メディカルスクールに戻る夏までは、1日15分程度の目処で、少しずつ学科の復習。USMLEのStep 2は合格しないと卒業できないので、この参考書を少しずつ読み進めることを日課とする。

【各論:ドイツでの研究について】
仮に「あと半年でドイツでの実験は終了、二度と戻らない」ことになっても、一応最低限の業績が出るように、計画。とくに、面倒を見ている院生が基本的には自分で全てできるように、あと、必要なら追加実験もしてくれることができるように状況を整えられればbest。彼が日頃から機械を回していてくれれば、忙しい病院実習の合間を縫って、ぽっと23週間もどって実験、なんていうのも可能である。
  • 優先順位をはっきりさせ、とにかく働く。働いただけ、紙になる、そんな状況はと整っているのだ。
  • 技官を容赦なく使う。Herr DoktorはHerr Doktorにしかできないことをする。
  • 目標は、紙をたくさん産生すること。それだけ。あまり新たな学問的な大局観を追求してはいけない。少なくともこれから半年のかき入れ時・踏ん張りどころは。

【各論:生活一般について】
  • とりあえず、これから3年程度はドイツとつながりを保つ、という前提で行動。よって、このたびのドイツ滞在は後半戦にさしかかったが、言語・文化の学習においては、引き続き中長期的努力を続ける。
  • とにかく、時間が足りない。短眠と規則正しい生活を心がける。これは、メディカルスクールの臨床実習に移行するに当たっても、超重要事項である。
  • あまり関係のない読書は慎むべきであろう。ブログも慎むべきであろう。しかし、どちらも、無理であろう。とするとやっぱり、生活を規則正しくして無駄な時間を省くしかなかろう。

2007/12/22

[ドイツより] Weinachtsfier (2C) 打出の小槌

小ボスの腐乱苦(仮)と久しぶりに話したら、パーティーの場だというのに、1月末までに、あるグラントに関連した論文の草稿だけでも完成できないか、だって。そのお金のプロジェクトはどれも当たりが今一で、毎年の中間報告会で相当しぼられてきたらしい。それで最近若干、頸を撥ねたあとの鶏のように駆け回っている様子。

僕の給料も機械も全て、そのグラントから出ていることは重々承知で、そのプロジェクトは進めてはいるのだが、1月末はね。もう2年以上もついているお金なのに、なぜ、6ヶ月目の僕が業績係に?とはおもいつつも、スポンサーの臍を曲げてもいけないので「1月末までに、論文のネタ(図版のリスト)の草稿くらいなら多分」ということに納めておいた。それにしても半年にしてすでに一本ほとんど書きあがっていて、さらに何で僕?打ち出の小槌じゃあ、ないのだ。

まあ論文を出す、という利害関係がボスと一致するのは悪いことではない。前のボスのように、自分の下手な中国人英語に直さないと気が済まない、一字一句自分の思ったとおりになるまでなら半年も1年もいとわない、という偏屈よりは、だいぶんましだ。ただ、急ぐあまりに小振りになってしまう危険がある。ドイツの1年の最大の目標は、「逆点満塁ホームラン」とまではいかなくても「3塁打」くらいは出すこと、なのである。