2007/02/04

[新聞] Academiaの黄禍

Little Asia On the Hill
By TIMOTHY EGAN
NY Times, January 7, 2007

Californiaは全米でも人口最多の州であり、仮に独立国であれば世界6~10位の経済を有するとは、よく言われる。同時に、西部開拓時代から続くオープンな気風からであろうか、全米でももっとも混沌を極める坩堝となっている。南からのラテン系移民の問題とともに、アジア系の擡頭も全米をきってのものである。2000年には全米50州中初めて、人口中の非ヒスパニック系白人の割合が50%を割り込み、マジョリティーのマイノリティー化ということで話題になった

移民問題でも、健康保険問題1でも、Californiaは常に米国社会の動向の先鋭をいっているが、academiaでのアジア系擡頭問題でも、先鋭をいっているようだ。

本日紹介する記事は、アメリカのacademiaにおけるアジア系の擡頭についてである。子供の教育を重視することで有名なユダヤ人と比較して「新しいユダヤ人の出現」とも形容されている2。具体的な事例としては、大学の入学選抜における人種考慮が完全撤廃され、結果としてアジア系が学生の41%をしめるにいたった、California大学Berkeley校を中心に紹介している。しかも、今年度の新入生は46%がアジア系で、この数は漸増を続けているそうだ。ちなみにCalifornia州のアジア系人口は全米でももっとも?多いが、それでも、12%に過ぎない。人種制限を依然なんらかの形で続けているほかの大学でも、Harvard 18%, Stanford 24%, MIT 27%, CalTech 33%といった数字だという。「アジア系」で一括される日本人がそう簡単には「遊学」できないのも、無理もない3

特記に値するのは、この新アジア擡頭の原動力となっているのは、hyphenated Asian(Japanese-Americanなど)ではなく、中国などからの新移民が中心であることだ。研究室の同僚(全員本土中国人)などと話していて感じるのだが、彼らにとって北京大学や精華大学などは、アメリカのivy league大学に行けない人が行くところである、という意識が感じられる。もしかしたら文革でリセットがかかったこととも関係があるのかもしれないが、良くも悪くも「東大京大、早慶上智」などという意識とは根本的に違うのではないかと考えられる。

アメリカに来ていると、アジア的な学問風土・儒教圏の学問風土、というものを遡及的に日本の大学に感じるが、それがもし守るべきものであるという立場に立つならば、日本以外に今や、その旗手はいまい。かといって、<英語しか話せない学生でも問題なく卒業できるような風土>が全く存在しない日本の大学が、これからの国際社会においてこのまま生き残ることは、どだい無理だろう。



1. オーストリア移民でもあるシュワルツネッガー知事が最近、不法移民を含む全州民の健康保険計画打ち出した

2. かつてacademiaにおいてminorityであったユダヤ系も、今や、すでにestablishmentの中核をなしており、とりわけ医学・生物学系ではmajorityではないかと感じられることすらある。ユダヤ系establishmentの新聞であるNY Timesでこういった特集を組んでいるというのも、考えようによっては面白いのかもしれないが、新聞を何種類も読んでいるわけではなので、なんともいえない。しかも、担当記者は名前からして、アイルランド系(カトリック系)である

3. ひとつここで勘違いしてはならないのは、たとえば研修医など、一定水準以上の能力で働き者の日本人が比較的重宝される「遊学」先はある。しかし、それは基本的に使い捨てのポストなのである。ポスドクなども、低賃金労働者である(日本から遊学している「ポスドク」には、無給のものすらいるくらいだから、アメリカにとっては都合がよい)。だが、医学部のように月謝よりも大学の投資が上回る課程とか、同じ学生でも奨学金・生活費がでるような出世コースなどには、そう簡単には入り込めない。ただでさえ出世競争が熾烈ななかで、さらに同類項と見なされる数多くのアジア系の強敵を蹴り落としていかねばならない。そのacademiaのガラス天井に気づかない脳天気な日本人の多いこと

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

ふむ。
われわれアジア系(特に日本人)にとっては厳しい意見ですが、真実でしょう。

MASTERSの高い授業料を我々日本人が払っているのに対して、クラスメートで、大学職員などの身分として、授業料の20%しか払わないアメリカ人などが(会社のスポンサーも含めたら)自腹を100%切らない学生が半分以上?もいて同じ授業を受けているのには愕然としました。ちなみに私がこの間までいた院のプログラムで顕著であり、今いる学部ではありませんが・・・。