2009/01/05

[旅日記] 機内徒然

飛行機は、人の飛ばない時に限る。アメリカでいえば12/25とか感謝祭当日などがまあそれに当たるわけだが、日本発は断トツで正月である。やすい上にたくさん席を占有できたのは、ここ何年ぶりだろうか。国際線というと最近はコンピュータの発達で、空席を作らない商法がどこの会社もこの上なく上手くなっているようだが、さすがに正月に飛ぶ日本人は、そうもいない。日本民族にまだ辛うじて残る、共通文化のようなものだが、それに逆行してうまい汁を吸うのも、それはそれでまた最近の文化のようなものであろう。



そういえばフランクフルト経由で日本に帰ったのだが、そのワシントン・フランクフルト便は、酷かった。せっかく通路側の席を取れたと思ったら、隣の中近東風の男が「風邪で便所が近いから、席を変わってくれ」という。地上1万メートルで国際問題を起こしたくもないので、変わってあげたら、ちっとも便所に行かない。

何かと思いきや。座席交代で隣り合わせとなったアメリカン・オバサンによると「あら、あれはイスラム教で私(女性)の隣に座れないからなのよ、よくあることだわ」という。このオバサンはイタリア在住だが、しょっちゅう里帰りしているというから、この便にも乗り慣れているらしいのだ。まあ戒律の厳しい宗旨は、実にご苦労なものである。



「あなたジェントルマンね、そんなの無視すればいいのにさ。」とアメリカ・オバサンいわく。まあ幸い膀胱の方もよく頑張ってくれたので、誰にもあまり迷惑をかけずに済んだ... と書いたところで、こう考えるのは実にジャパニーズな気がしてならない。アメリカ的にはmea culpaならぬ、tua culpa, tua culpa, tua maxima culpaな訳で「席を替わってやったのだから、少々またがれたり、通せと立たされても文句はなかろう」というのは正論だ。

あと不思議なのはその中東風の男。別に素直に「女の隣には座れないんだ」といってもらえば、フムフムと座席を交代したところであるのだが、それはどうやら、いえないらしい。しかも着陸後には、僕とアメリカ・オバサンに対して、「あんたら話しすぎ。ちっとも寝られなかった。ほかの客のことも考えろ」と難癖をつけてきた。確かに話は文学から経済から米欧歴史論から専門の脳の話まで、実に多岐にわたって盛り上がったのではあるが、そもそもことの端緒はあなたのために座席を交換して差し上げたことにある、という感覚は、全くないらしい。

世界は広い。



追、現役時代は自分の商売を起業して、それなりに成功を収めたらしいアメリカ・オバサン。そのアドバイスによると、「あなたは話がうまいからきっと成功するわ。」だって。アメリカ人はお世辞がうまい。で、アメリカでの社交の成功の秘訣は、うまくShakesepeareなどの名言を引用することにあるそうだ。「あなたはShawとか、Wildeがお似合いだ」そうだ。あと、イギリス本国で商売をする場合は逆説的に、Twainとかの方が受けるという。

まあよくわからないが、アメリカに帰国したら、名言集が届いているように、アマゾンに頼んでおいた。

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