2008/06/17

[旅日記] 小旅行2008 ベルリン(c-1) 涙のFriedrichstraße駅

もう1週間以上前のことになってしまうが、かねてから計画していたベルリン壁の旅がついに実現。ベルリン内市街の壁のルートを、1日かけて、20 kmちょっと、歩いた。

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そもそも、このところ「メディカルスクールを卒業したら、またMagdeburgに帰還してポスドク」計画が若干揺らいだりもしている。だから、現地に暮らしていないとできないようなこういう観光が、重みを増してくる。



少し前までは95%くらい決まりだったはずの、マグデブルク帰還計画。

考え直しはじめた一因としては、メディカルスクールの一番の友人(MD/PhDの1年先輩)の栗巣(仮)が、病理研修への出願を決意した。病理、僕も考えたことはある。研修科の中でももっともスケジュールが軽い部類で、半分ポスドクのように研究しながらでもできるという。あと、古来から医学の中ではもっともアカデミックな科の一つで、あと、研修先で仮にそのままポストが得られたとして、医学部の授業をやらなければならない以外は、臨床のdutyがきつすぎて研究ができなくなるような危険性は、もっとも低いと考えられる。

栗巣は腫瘍学の博士をとったので、病理などは実にそのまま。でも脳の僕にしたって、必ずしも研究に役立たないとも限らない。というのは、僕のトレーニングは分子生物学・生化学・生理学・電気生理学が中心で、脳科学の学問的支柱である解剖学が、ほとんどすっぽり抜けている。教科書で読むくらいは知っているが、適確な研究構想を練ることはちょっと無理だろう。仮に研究室をもてたとして、解剖関連のテーマで金を取ろうと思ったら、誰も相手にしないだろう。

で、科学者としてヒトの脳にモノとして実際にふれられるのは、だいたい、漬け物になってからである。無理して開頭したてんかん患者を相手に電気生理学をやっている殊勝な人たちもいるが、脳のmesoscopicな構成に興味が向かうであろう今世紀、<広範な脳回路全体をめちゃくちゃに駆動してしまうてんかんというstateの脳>を研究するのにも、限界がある。第一、そういう派手な研究は大御所じゃないと、できない。

MRIで、「フツー」状態の脳を計測しよう、という話もある。でも、つい先週ミヒャのボスでもある大御所がNatureに大レビューを出したように、MRIは脳が集合的に動くという前提が通用するような厳選された生物学的な問題にしか、本来は適用できない。これから先、この制約が、工学的に解かれるという見込みもない。だからいくらきれいな画がとれたって、生物学的な前提が狂っていれば、統計的に優位な脳の局所的「活性化」だって、その解釈は難しい。

だから、最終的にはヒトの脳を探ることをもし脳科学の目標とおくならば、病理学に手を染めることも、悪い話ではないかもしれない。あと、学位だけとって免許を取らない(つまり、研修をしない)といったら、親もきっとうるさいだろう。事実、自分の履歴書を客観的に見ると、免許くらい取っておいたほうがよい、というのは正論のような気もする。



いずれにせよ、インターネットで調べて、ベルリンの壁を歩いた。

まず、ベルリン乗り入れ。普段使うBerlin Zoo駅ではなく、今日はFriedrichstraße駅から入った。この駅は旧東ベルリンに少し入ったところにあるが、鉄道での東西の接点となっていたらしく、駅は西側ゾーンと東側ゾーンに分断されていたらしい。ここで家族が引き裂かれたりしたものだから、「涙の王宮」と呼ばれていたという。


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あまり大きな駅ではない。このホームの間にきっと、巨大な壁が立ちはだかって、駅の中には銃を抱えた監視兵がたくさんうろうろしていたのだろう





Friedrichstraße駅から地下鉄で、南のトルコ人地区にあたるクロイツベルグ方面へ。Schlesiches Tor駅から歩行開始。

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公園の中の監視塔。壁を乗り越えて西側に亡命しようとするものは、国境帯の地雷にやられるか、この塔から射殺されるか。それでも東がよっぽどいやだったのだろう。壁が完備してから後も死者、そして壁越え成功者は絶えなかった。現代、塔の周りでは家族連れがこともなげにピクニックしていた。


道中見かけた蚤の市



公園の隅の壁。下調べをしていなかったら、見逃していたところだ。ただの落書きだらけの壁にしか見えない。これが、多くの死者を出し、多大な悲しみの源泉であったとは、想像だにできない。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

このたび日記は地図ルートまでついてて、なかなか気合入れてますね。結構楽しめます。
私もそろそろ今夏以降の選択をしなければいけない時期が来ております。^^;。