2007/10/09

[新聞] イラン攻撃間近。マジか?

Shifting Targets: The Administration’s plan for Iran.
by Seymour M. Hersh
(New Yorker, October 8, 2007)

今年の頭くらいからから、アメリカのネオコンたちは、イラン戦争を鼓舞してきた。

おそらく政治目的が大きいのではないかと思われる。というのも、もはやこのままいったら共和党は、大統領の座はおろか、議会も完全に超少数派に堕ちる運命にある。そうすると民主党によって、ブッシュ政権のでたらめ政策の数々や腐敗が、木っ端微塵に糾弾されるだろう。これを防ぐには、愚民階級のナショナリズムをjingoisticなレトリックで煽動することくらいしか、もはや手はない。経済も、暴落の瀬戸際を右往左往しているが、どうもこのままでは大統領選までは持ちこたえられない。さらに、議会を取り戻した民主党は現在、共和党系の傭兵会社の不正請求やイラク市民虐殺事件を取りざたしようとしている。なんともMachiavellianだが、戦争を起こすくらいしか、手はないのだ。



とても有名な外交記者による表記の記事によると、ブッシュ政権下のCIAイラン部局は現在、大幅増員が行われているという。ちょうど、2002年にイラク部局の大幅増員があったように。アメリカの民意はイラクに懲りて、イラン戦争に関してはとても否定的だが、いったん始まるとどうもアメリカ人は「support our troops」とかいう無意味な標語に団結しやすい。団結、というよりは、思想暴力を通して従わされる、といったほうが正しいかもしれない。ネオコンの民衆煽動戦略は、第三帝国とみまがうようなものだ。

民意は消極的なので、「イラクの米兵を守る」という名目で、作戦は開始されるそうだ。だが、この記事の分析によると、イランは爆撃されて、黙ってはいない。ヘズボラなどと組んで、ヨーロッパ・ラテンアメリカを舞台に、米国の先制攻撃を遥かにしのぐ世界的反撃の準備を進めているらしい。

福音派の新興キリスト教には、raptureとよばれるキリストの再来の末世思想が存在するが、「イランと戦争になったら、これは聖地をめぐる世界大戦に及び、世の最後になる。」アメリカの新興キリスト教の一部では、こんな話にまで、なっているらしい。こういうのを、self-fullfilling prophecy(予言の自己実現)という。



これに対し、正気のアメリカ・インテレクチュアルは(もちろんネオコン思想にまだしがみついている輩は、このうちに含まない)表立った反撃ではなく、イランの民主化運動の記事や、イランの自己改革の記事をだすことによって、対抗しようとしているようだ。その主要な論旨は、イランを攻撃すると国民は外敵に対して団結し、内部におきている民主化運動がつぶれてしまう、といったものだ。

子供の火遊びはいい加減にせい、とネオコンどもにいってやりたいのだが、これはアメリカ愚民がローマ没落の後追いをしていることの、必然的な帰結かもしれない。ただ今度は、地中海世界はもちろん、すべてが巻き込まれる。混乱に乗じて、アジアでは中国がどう動くか、これも要注意だ。かれらが、Pax Sinicaを築くような度量があればよいのだが、最近の様子では、そうでもなさそうな気がしてならない。

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