[本・一般] 国境の南、太陽の西
国境の南、太陽の西
村上 春樹
去年の秋に日本で買ってあったのだが、長くベッド横のテーブルの、本の山に埋もれていた。それでも着実に、展開部のはじめまでは読み進めていた。ジャズ・バーを経営する主人公の、幼少の話などといった伏線が続く。
それが昨晩読んでいたら物語は急展開して、やめられなくなってしまった。途中でやめられなくなって未明まで小説を読むのは、実に大学以来かもしれない。小学生のころは日常茶飯事のように、布団にもぐって懐中電灯の明かりで小説を読みふけったものだった。
人によると、村上氏は米文学を研究した上で日本文学を書いているため、実にアメリカ的な日本小説を書くのだそうだ。だから世界中で受けがよいのかもしれない。アメリカ的といっても、日本語はきれいだし、語り口はどうひっくり返しても日本小説に相違ない。たとえれば、宮城道雄「春の海」のようなものだろうか。
中年の主人公は家族もちなのに、幼馴染みで長く音信の絶えていたsoulmateの不思議な女性と浮気をする。客観状況を考えると、歳は10歳、商売もかけ離れていて、とても主人公と共感できそうにはないが、なぜだか10年後の自分を見ているような気がして不思議であった。自分の心の穴を埋める何かを求める気持ちと、それがかなわない現状のもやもやが、痛いほどわかる気がしたのだ。
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