2007/06/21

[実験屋日記] Science in Japan Forum (1)

先週は人に誘われて、<ニッポン ノ ガクジツ ヲ フルイ オコス カイ>1のワシントン事務局が開いた、「日本における科学」という会に参加。毎年物理学関連のテーマが多いそうだが、核融合(1部)と加速器(2部)の大プロジェクトについてが中心であった。さらにscience funding(3部)の話もあった2

名簿によると参加者は、大プロジェクトに携わる物理屋さん、日米や各国の研究費支給団体や各国大使館員、米国エネルギー省関連、科学メディアなど。生物学の若手実験屋が脳天気にこんなところに現れるなんて、まずありえない3

が、時々、よその学会に飛び込むのも面白い。学会といっても、本当の物理の話しをされたら一つも分からないだろうから、policy maker達を相手にしたこの位の会がまあ、限界だろう。

物理学の大プロジェクト。生物系の研究予算が苦しいといっても、かかる額の桁が違う。生物なら、いざとなったらポケットマネーでも出来る分野・部分がないわけではない。ところが物理屋さん達は、ちょっと核融合炉を一台、なんていうわけには、とてもゆかない。だから物理屋さんの長老達は、お役人さん達を相手に夢を売るのが商売となってしまうのだろう。ビックサイエンスの勉強になった。



第一部、核融合科学の現在と未来
29年後4には世界プロジェクトによって、核融合エネルギーの実用化に成功する予定らしい。ヘ~。

子供の頃だから記憶は全く当てにならないが、1980年代からもう、同じようなことを言っていた気がする。と思いきや、高齢の物理屋さんが二人、質問に立って、そんな内容の指摘をした。彼らは別分野の物理屋さん達で、要するに「なんだおまえら、ホラを吹いて俺らの分の金までブン取りやがって」ということらしい。

そこでアメリカのエネルギー省の老役人が質問。どうやらそのプロジェクトの要点をついた指摘らしくて、演者も一瞬ひるんでいた。これは金を出す方もプロかもしれん。



ところで、欧米のこういう学者と日本のこういう学者の話を聞き比べると、nは極小だが、やはり力量が大分違った。▲欧米の人は、役人にも分かるように実験施設の要点や実施のタイムライン、予算の国際配分、関連する許認可などの必要性、組織体系などを説明することが中心であった。実験が成功した場合の成果、失敗した場合の成果、とにかくこれは金を出したらリターンがありそうだ、という気にさせるのが上手い。恰好いい技術設計書や、建設予定地の美しい写真も効果的に使用。本職に対してはもっときちんと話すのだろうけれども、ここでは学問はプロップにすぎない。▲日本の人は、ちんぷんかんぷんの素人を相手に研究内容をだらだらと話し、その中に「核の平和利用」とか「地球外生命の可能」とか「技術立国日本」とか「人類の長期発展には核融合が必須」とか、およそ具体性や根拠のない標語を適当に放り込む、という印象であった。最後にモデレーターの偉いアメリカ人学者が、「このお話にあった研究は...(これこれこういう訳で)...私たちの分野では本当にground breakingな学問結果なんですよ」と数分間の解説をつけねばならないほどであった。





1. Google対策

2. そこで、医学・生物系のfundingについて、衝撃の事実を知ったが、それは次回。

3. まあ、「タダメシと大学院生は、切っても切り離せない関係にある」、とだけ付言しておく。

4. 妙に具体的

1 件のコメント:

Mark Waterman さんのコメント...

>金を出す方もプロかもしれん。

プロです。多分。

昔、国際出版に携わったり、日本の編集者やお役人とも会いましたが、欧米と違い皆素人で当該学問分野で博士号をもつ人は皆無でした。しかし、素人であるはずの編集者や役人は、理解力は抜群でした。聞けば概ね日本のメジャーな大学出身者で教養が深い(高い?)。これは昔の日本の教育を受けた人たちで今は違うのかもしれません。

アメリカだって昔は教養と優れた理解力をもつ有名大学卒が素人で編集者や役人をしていたものですが、今はますます専門家が入り込むようになりました。実際に、私の甥の一人は、アイヴィーリーグの教養教育を受け、医学生物学系で Ph.D.(non-M.D.)を取ってから役人をしています。自分の研究をするより、人の研究の管理ばかりしている人生なんて、私はつまらないと思うのですが、それなりの遣り甲斐もあるのでしょう。(なんとなく気楽そうだし、←Egn 御免!)

だから、玄人の可能性のある

>役人にも分かるように実験施設の要点や実施のタイムライン、予算の国際配分、関連する許認可などの必要性、組織体系などを説明

しないと、馬脚をあらわすことになる。

MWW