2007/03/15

[新聞] 人間の醜さ

This I Believe: A Potential for Brutality
by Yinong Young-Xu
National Public Radio, March 5, 2007

NPR1の「This I Believe」シリーズでは、有名・無名のアメリカ人のエッセーを時折、朝晩のニュースに織り込んで報道している。1950年代の、同名の民放ラジオ番組の復活版である。ふと、この中国人移民のエッセーを耳にした。文革の上海で育った筆者は、「人間は本質的にむごいことをする可能性を秘めている」という。年齢が若すぎて紅衛兵にはならなかったが、子供ながらに、反革命分子の拷問の野次馬で、血を沸かせたという。

これに類するはなしは、子供の頃はたくさん聞いた覚えがある。原爆のはなし、ナチスのはなし、沖縄のはなし、731部隊のはなし、KGBやStasiのはなし、祖父が行軍で行き倒れそうになったはなし、もう一方の祖父が蔵書を新聞にくるんで床下に収め特高から隠したはなし。ではなぜ、このエッセーが耳にとまったのだろう。

近ごろ、人間の醜い側面が上塗りされて隠されてはいないか。それともぼくが実験ばかりしているから気づかないのか。しかし、テレビでmissileが飛び交う画像をみたって、その先に必ずある、どすぐろい血にまみれて蛆わく屍と化した父たち・母たち・子たちまでは連想できないのが、人間というもの。そして人類の世代的記憶が薄れた頃に、また、恐ろしい惨事が起きるのだろう。



1. NHKラジオのようなもの、ただし、政府からの援助以外に任意の寄付が収入の大半を占める。報道などがliberalにすぎると批判されることもあるが、ぼくには、fair and balancedとしか思えない。

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